雪崩の痕跡確認できず

小谷 山スキーヤー大勢入山

信濃毎日新聞 掲載

平成25年03月23日(日)

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 北安曇郡小谷村の栂池高原スキー場から離れた山中で21日に発生した雪崩事故から一夜明けた22日、大町署は雪崩が起きた現場付近へ向かったが、雪崩後の降雪で痕跡はほとんど確認でき恕かった。この日は快晴に恵まれ、スキー場は大勢の利用者でにぎわい、山スキーヤーの新しい滑走跡が見られた。

 現場はゴンドラリフトの終着駅から鵯(ひよどり)峰側に約500b離れたゲレンデ外の林の中。スキー場のパトロール隊員によると、例年雪崩が起きやすい場所だという。

 22日、ゴンドラを運営する白馬観光開発の栂池営業所は、雪崩が発生した地域に入らないよう呼び掛け、注意を促す紙をチケット売り場周辺に張り出した。それでも、大勢の山スキーヤーらがゴンドラを降りてから雪崩が発生した現場の下側にある林道を通り、北アルプス白馬乗鞍岳近くの天狗原(標高約2200b)などに向かった。岐阜県多治見市から訪れた会社員の男性(58)は斜面の上方に異常がないか確認しながらスキーで歩いた。男性は「雪が重く、雪崩の危険を感じた」と言い、白馬乗鞍岳を越える予定を変更して天狗原で引き返した。

 天狗原で滑っていた愛知県豊田市の男性医師(67)は「21日も滑る予定だったが、ものすごい降雪で諦めた」。スキーヤーが雪崩に巻き込まれて死亡したことに「山スキーには、それだけリスクがあるとあらためて自分を戒めた」と話していた。

 死亡は千葉県山岳連盟前会長

 大町署は22日、北安曇郡小谷村で21日に発生した雪崩で、全身を強く打ち死亡した男性は、千葉県長南町の会社員宇野仁章さん(70)と判明したと発表した。宇野さんは千葉県山岳連盟前会長。また、けがをした男性は、同県茂原市の無職畑山重治さん(67)と分かった。畑山さんは右腕など数カ所を骨折する重傷。

 大町署は22日、県警ヘリコブターで上空から雪崩の発生現場付近を見た。雪の表面が崩れる「表層雪崩」の可能性があるとみて調べている。

 千葉県内の50〜70代の男性5人グループのうち3人が雪崩に巻き込まれた。

 登山歴50年「山を熟知」

 小谷村の栂池高原スキー場近くで雪崩に巻き込まれ、亡くなった宇野仁章さんは登山歴50年以上で、岩登りから冬山登山、山スキーまで何でもこなす「ベテラン中のベテラン」だった。

 千葉県山岳連盟の会長を6年間務め、昨年退任したばかり。会員の男性(63)は「要職を離れ、自分で山を楽しもうとしていたのに…」と悲報に言葉を失った。

写真:雪崩は右側斜面上部であったとみられる。新しい山スキーの跡が多数見られた=22日、小谷村 

 ※謹んで哀悼の意を申し上げますとともに、ご冥福をお祈り申し上げます。 長野県山岳連盟一同