不明2人見つからず

白馬大雪渓雪崩テントを回収

大規模な表層雪崩か

信濃毎日新聞 掲載

平成25年04月30日(火)

スクラップ


 県警などは29日、北安曇都白馬村の北アルプス白馬岳(2932b)白馬大雪渓で雪崩に巻き込まれたとみられる山口市の男性2人の捜索を続けたが、発見に至らなかった。大町署は、30日から天候が崩れる可能性があるとして、29日で組織的な捜索は終えるとした。

 県警山岳遭難救助隊員、北ア北部地区山岳遭難防止対策協会員ら14人は、岐阜市の病院職員山口典子さん(56)が遺体で見つかった雪崩跡の標高1700〜1800b付近を捜索、デジタルカメラやサングラス、ピッケルなどを発見した。また、山口市の男性2人が所属する宇部山岳会(山口県宇部市)の4人もこの日、遺留品回収などで大雪渓に入山。白馬尻小屋近くで2人が設営したとみられるテントを回収した。

 28日夜に山口県を出発したという宇部山岳会の4人は疲労の色が濃く、下山後の取材に「雪崩の規模が大きく、手掛かりをつかめなかった」と一様に沈痛な表情。同会副理事長の江本正彦さん(51)は「発見は諦めていない」と振り絞るように語った。

 1人死亡、2人が行方不明となった白馬大雪渓の雪崩遭難。捜索が打ち切られた29日、大町署や救助関係者、登山者らの話から、この時期としては大規模の表層雪崩だった可能性が浮かんだ。

 同署は規模について幅が最大80b、長さは大雪渓本流で目視できる範囲で500b余とする。これに、雪崩の押し出しは2号雪渓から始まっていたと言う下山者らの目撃情報を加えると規模はさらに大きくなる。2年前のこの日、大雪渓で2人が死亡した雪崩の長さは約200bだった。

 白馬尻小屋近くにテントを張っていたという奈良県の男性(36)は、遭難当日の27日朝にかけて猛吹雪で「ほとんど寝られなかった」。3〜5時間おきに雪かきをしなければ積雪でテントが圧迫され怖かったと証言する。

 古い積雪の上に積もった新雪が滑り落ちる表層雪崩は厳冬期に起きやすいとの見方もあるが、国立登山研修所(富山県立山町)専門職の東秀訓さんは「降雪中とその直後は雪崩に気を付けろ−が鉄則。条件がそろえば季節は関係ない」と指摘。登山をするなら少なくとも10日前から気象情報に気を配ってほしいと、繰り返される悲報を受け、あらためて警鐘を鳴らす。

写真:白馬大雪渓の遭難現場。雪崩跡の下部(右下)で救助隊員らが捜索した=29日午前11時半ごろ 

山岳遭難相次ぐ

 29日も各地で山岳遭難が相次いだ。

 午前9時45分ごろ、岐阜県高山市の北アルプス奥穂高岳(3190b)の標高2985b付近にある鎖場で、神奈川県伊勢原市、会社員佐々木武さん(36)が約30b下の岩場に転落した。岐阜県警がヘリコプターで救助、病院に搬送したが頭を強く打っており意識不明の重体。

 岐阜県中津川市の中ア恵那山(2191b)では午前7時15分ごろ、標高1350b付近で名古屋市北区、自営業伊藤勲さん(68)が崖から3〜4b下の岩場に滑り落ち、手や足に擦り傷を負った。

 一方、南ア仙丈ケ岳(3033b)で28日午後に転倒し、救助要請のあった兵庫県芦屋市の会社員男性は29日朝、長野県警ヘリコプターで救助され、伊那市内の病院に運ばれた。伊那署によると、幅良敬之さん(33)で左足首ヒ骨を折るなどの重傷。中ア空木岳(2864b)で28日に滑落、全身を強く打ち同市内の病院に運ばれた川崎市の大学生男性(22)は、駒ヶ根署によると、意識は戻っていないが容体は安定しているという。