県防災ヘリ週2日運休

退職の操縦士補充できず

要件緩和し追加募集

信濃毎日新聞 掲載

平成25年04月09日(火)

スクラップ


 県消防防災ヘリコブター「アルプス」の操縦士が4月から1人だけとなり、休日確保のため週2日は運航できない状態であることが8日、分かったひ昨年末に操縦士1人が退職し、年明けに後任を募集したが要件を満たす人が見つからないまま。県は8日に追加募集を始めたが、このままでは登山客が増える大型連休や夏切登山シーズンの遭難対応が不十分になるとの懸念も出ている。

 アルプスは主に県警ヘリ 「やまびこ」が担う山岳救助で補助的役割を果たし、山林火災の消火、県外への転院搬送もする。これまで操縦士2人が交代で運航していた。

 県消防課によると、1人が退職したため、ことし1〜3月は民間から操縦士の派遣を受けた。1月10日から2月12日に即戦力となる操縦士を募集。3人が応募したが、飛行時間や資格など必要な条件を満たす人がいなかった。

 今月から民間派遣も受けられなくなり、木、金曜を中心に運休。県は、機体の点検で飛べなくなる日と操縦士の休みを合わせるなどして影響を抑えるとする。県消防防災航空センター(松本市)によると、操縦士の欠員で運航に支障が出たとの情報はないが、複数の遭難が同時発生すれば対応できない恐れもある。

 追加募集では、アルプスを操縦するための資格を不要にし、条件を緩和。8月1日に採用し、資格がない場合、その後に訓練して操縦可能な資格を取ってもらう予定で、2人態勢に戻るのはさらに後になる。

 県消防課は「一刻も早く適任者を採用し、通常の運航態勢に戻したい。民間からの操縦士派遣も探り、1カ月でも2カ月でも欠員を埋めるようにしたい」としている。

写真:県消防防災ヘリ「アルプス」


経験豊富ヘリ操縦士不足

全国傾向 県防災ヘリにも影響

信濃毎日新聞 掲載

平成25年04月10日(水)

 災害時、遭難者救助などで出動する防災ヘリコプターに乗ることができる経験豊富な操縦士が、全国的に不足していることが、信濃毎日新聞の取材で9日分かった。長野県の消防防災ヘリは、操縦士1人が欠員となり週2日は運航できなくなっている。各地でドクターヘリの導入が進み、操縦士の需要が高まっているものの、人材育成が追い付かない状況だ。

 県消防防災ヘリ「アルプス」は4月から、1人になった操縦士の休養のため週に2日は運休。県消防課は運航できない日について、県警ヘリ「やまびこ」や近隣6県からの協力を得るなど住民への影響を食い止める考えだが、人材確保が課題となっている。

 国土交通省によると、防災ヘリやドクターヘリなどを操縦できる定期運送用と事業用の資格がある操縦士は、増えていない。2000年は全国で1128人だったが、11年は同1046人。一方で需要は高まる一方だ。

 県消防防災航空センター航空隊の柴崎正行隊長は「操縦士と整備士が不足傾向」と指摘。ドクターヘリや防災ヘリを運航する民間のジャネット(山梨県甲斐市)の松岡雅治航空運航本部長は「初心者とベテランの差が開いている」と話す。経験豊富な団塊世代の退職なども影響しているという。

 県消防課によると、消防防災ヘリは山岳救助でのホバリング(空中静止)技術や消火活動など高い技術が求められる。今回の追加募集でも「総飛行時間1千時間以上」という条件は緩和しなかった。県医療推進課によると、県内のドクターヘリ2機は患者搬送時の安定性確保などで、同2千時間以上を条件としている。ドクターヘリは01年ごろから全国各地で導入が進み、現在は34道府県で計40機が運航している。

 ある航空会社の社員は「難しい仕事に若い人を出すことが難しい」とし、経験豊富な中堅やベテランに頼らざるを得ない現状を認める。以前は農薬の空中散布などで飛行経験を積むことができたが、近年は環境への影響を心配する住民の声や散布用ヘリの無人化で飛行の機会が減少。20年ほど前は年間150〜200時間飛んだが、現在は年間100時間飛べない操縦士もいるという。「2千時間となると、20年以上かかってしまう」と将来的な人材確保に不安を口にした。

写真:県消防防災ヘリコブター 「アルプス」=9日、県 営松本空港内の格納庫