第2回梅棹忠夫・山と探検文学賞

中村保さん「最後の辺境チベットのアルプス」に

信濃毎日新聞 掲載

平成25年03月11日(月)

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 民族学者・文化人類学者の梅棹忠夫さん(1920〜2010年)にちなんだ「梅棹忠夫・山と探検文学賞」(同賞委員会主催、信濃毎日新聞社など協賛の第2回受賞作に、中村保さん(78)=東京都=の「最後の辺境 チベットのアルプス」(東京新聞)が選ばれた。10日までに、同委員会が中村さんに伝えた。

 中村さんは1934(昭和9)年、東京生まれ。一橋大山岳部に所属し、信州の山々などの登山に熱中。大手重工業メーカー勤務を経て、90年から東チベットや雲南、四川など、ヒマラヤ山脈の東側の踏査を重ね、21年間にわたり30回以上、探検を繰り返してきた。成果を内外の雑誌で発表し、秩父宮記念山岳賞、英国王立地理学協会の「バスク・メダル」を受賞した。

 2005年までに、「ヒマラヤの東」(山と渓谷社)などの3部作を刊行。「最後の辺境」はその「完結編」と位置づけ、05年以降7年間の踏査や研究、世界各地での講演などをまとめた。6000b級の未踏峰を含む山々の姿や、メコン川など大河の上流部がつくる深い峡谷などの地形を解説。「チベットのアルプス」と呼ぶ美しい山々の写真や地図を入れ、知られざる世界を紹介している。

 自らを「元企業戦士のキセル登山家」「老年探検隊」と呼ぶ中村さん。梅棹賞の受賞の知らせに「約20年の踏査や研究の集大成である本書で、尊敬する大先輩の梅棹さんの名前を冠した賞をいただけるのは光栄であり、励みになる」と話している。

 同賞は世界各地を探検し、独自の文明論を展開した梅棹さんの姿勢を受け継ぐ狙いで、10年に創設。第1回の受賞作は角幡唯介さんの「空白の五マイル」(集英社)。今回は11〜12年に刊行された約30点から選んだ。

写真:中村保著「最後の辺境 チベットのアルプス」