県内登山客にヘルメットを

滑落や転倒頭のけが増加に対応

信濃毎日新聞 掲載

平成24年12月31日(月)

スクラップ


 北アルプスなどで近年、滑落や転倒で頭をけがする遭難者が多いため、県教委は来年の夏山シーズンから、 岩場が多い県内の山岳地域で「着用奨励地区」を指定し、無料でヘルメットを貸し出す取り組みを始める。県の2013年度い一般会計当初予算実に購入費用約30万円を含む総額約2800万円余の山岳遭難防止対策推進事業費を盛り込む方針。日本山岳協会(東京)によると、こうした取り組みは「聞いたことがない」という。

 県教委スポーツ課によると、ヘルメットは約40個配備予定。13年の夏山シーズンは、北アルプスを巡回する県山岳遭難防止対策協会の夏山常駐隊が待機する山小屋や北ア涸沢にある県涸沢山岳総合相談所などに配備し、同隊の隊員らが貸し出し業務をする。ヘルメットは返却が必要となるため、登山客が多い北ア穂高連峰などで山頂まで1日で往復できる山を対象にする。同課の担当者は「山岳観光県として、登山者の安全を守るため、装備面の対策もしっかりとしていきたい」と話している。

 県警地域課によると、県内の山岳の12年7〜8月の遭難者118人のうち、約25%に当たる30人が頭部を負傷。うち7人が死亡した。一方、北ア南部の穂高連峰で岩場から約150b滑落したものの、ヘルメットを着用していて命が助かった事例もあったという。

 穂高連峰など北ア南部の山小屋約20軒でつくる北アルプス山小屋友交会の山口孝会長は、険しい北アの登山道では擦れ違い時の転落や落石の危険が高いこともあり、「ヘルメットがあれば防げた死亡遭難事故は多い」と話す。同会も、会員の山小屋のホームページなどで来季から、岩場の多い登山道に向かう際はヘルメットを着用するよう呼び掛ける。山口会長が経営する涸沢ヒュッテも、ヘルメットの有料貸し出しを始めるという。