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シェルパ族・ラマさんカレー店開店 | |||||||
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ヒマラヤ8千b峰での山岳ガイド経験があるネパール人シェルパ族のゲル・ラマさん(35)が今月、大町市中心街の空き店舗にネパールカレーの店を開いた。来日して8年。郷里によく似た北アルプス・後立山連峰の山並みにひかれて、神奈川県から松本市、さらに大町へとやって来た。いつか旅行会社をつくって北アとネパールを結びたい。そんな夢を家族も後押ししている。
少しひなびた大町名店街の中ほどにある店「ヒマラヤンシェルパ」。登山の無事を祈るチベット仏教の五色の旗が天井を埋める店内にネパールの民族音楽が流れ、同国直輸入のビールが数多く並ぶ。ネパール人スタッフ2人と、9月から自分たちで内装を手掛けた。「山の仲間が登山の行き帰りに集まるベースキャンプのような場所になると思いました」。ラマさんが開店に込めた思いを語る。
爺ケ岳から鹿島槍ヶ岳、五竜岳、白馬岳へと連なる後立山連峰。「大町に続く真っすぐな道を通うたびに(これらの山を見て)本当に感動します」。自宅のある松本から大町に近づくにつれ、びょうぶのように迫る冬の景観がふるさとを思い出させる。
ヒマラヤの高峰を間近に望むシェルパ族の街で生まれ、同族の名を高めた先人たちに憧れて14歳から登山隊の荷運びや料理担当に。やがてガイドとなり、世界最高峰エペレスト(8848b)の二度の登頂のほか、チョー・オユー、シシャパンマなどの8千b峰を経験したという。
12年前にネパールを訪れた及川真理子さん(33)と出会い、結婚。2004年に来日し、真理子さんの実家がある相模原市で製造業の派遣労働者として働いたが、08年のリーマン・ショックで失職。知人の誘いで09年に松本に移った。翌年には妻子も呼び寄せた。
相模原時代から北アにはよく通い、槍ヶ岳や穂高連峰がある南部エリアの山はほぼ登ったという。「日本の山にはヒマラヤとは全く違う難しさがある」。特に、目まぐるしく変わる冬山の気象だ。「ヒマラヤは崩れるにせよ晴れるにせよ1週間くらいは続く。日本は厳しい寒さが急に暖かくなったりする。雪崩も読めない」。一方、昨年仲間と登った白馬大池(北安曇郡小谷村)で北アの美しさにあらためて感激。ガイド心が騒いだ。
現在、日本のガイド資格取得に向け、店の経営の傍ら山仕事や測量のアルバイトもこなしつつ、北アの地形を覚えるなどして勉強中。東京の山岳ツアー会社で働いた経験がある妻の真理子さんも「落ち着いたらまた私も旅行の勉強を始めたい」と話す。2人の目標は、大町で小さな旅行会社をつくって、ネパールを紹介することだ。
写真:チベット仏教の五色の旗が天井を飾る店内で語らうラマさん一家。山への愛着はひとしおだ