山岳環境の維持考える

山小屋経営者らパネル討論

トイレ有料化・鹿食害

信濃毎日新聞 掲載

平成24年09月18日(火)


 環境に配慮した山小屋トイレの利用者負担の在り方や鹿の生息域拡大を考えるシンポジウム「山岳環境は今…今私たちにできること」が17日、松本市のキッセイ文化ホール(県松本文化会館)で開かれた。県が主催し、登山愛好者ら約250人が集まった。

 北アルプス山小屋友交会の山口孝会長ら6人がパネル討論。県自然保護課担当者が、国の山小屋トイレ整備補助事業で利用者負担の仕組みづくりが求められているのを受け、北アルプス南部と御岳山で、ことしから山小屋トイレが1回100円の有料になったことを紹介。北ア・涸沢で山小屋を経営する山口会長は「利用料収入は維持費の3分の1ぐらい。有料化で100円を払ってくれる人は増えたが、利用料だけでの維持は難しい」と話した。

 多くの山小屋では、トイレの利用は任意のチップ制となっている状況に、大手アウトドア用品メーカー「モンベル」(大阪市)会長の辰野勇さんは「全国統一のルールとして定め、登山ツアーの会社などから徴収する仕組みをつくるべきだ」と訴えた。

 また、県内の山岳地域に鹿の生息地が広がっている問題も議論された。硫黄岳山荘などを経営する浦野岳孝・八ヶ岳観光協会理事は、八ヶ岳での鹿の食害について説明し「最近では毒草も食べるようになっている」と指摘。山口会長は、北ア北部でも鹿の目撃例が相次いでいるとして「上高地に鹿が侵入したら、すぐ高山植物への被害が拡大すると思う。1頭でも目撃例があったら危ない」と強調した。

写真:山小屋トイレの利用者負担の在り方などについて議論したシンポジウム