ふるさと信州寄付金 山の安全に活用

県外登山者へPR開始

遭難多い現状.念頭に仕組み伝える態勢が課題

信濃毎日新聞 掲載

平成24年7月28日(土)


 県は今夏、「ふるさと信州寄付金」(ふるさと納税)の使い道の選択肢として登山者の安全対策に関する項目を加え、県外からの登山者らにPRを始めた。県内の山には多くの県外者が入山するとともに、遭難者の多くも県外者であることから全国から広く費用を集めるためだ。山岳関係者らにもPRの協力を求めているが、寄付金の仕組みをどう知らせるかが課題だ。

 担当の県教委スポーツ課職員らが北アルプスの山小屋などを訪れ、寄付金のPRについて協力を要請。北ア・涸沢の涸沢ヒュッテを23日に訪れた原一樹課長は「遭難防止のため広く費用を集めたい」と説明し、同ヒュッテの山口孝社長も「相談員のちょっとした声掛けが遭難防止につながっている。山の県内経済への影響も大きいだけに安全対策は重要」と応じた。ヒュッテのフロントにポスターを張り、寄付金申込書を登山者らに配布することにした。

 同課によると、県が活動の負担金を出している県山岳遭難防止対策協会(県遭対協)は安全登山の啓発活動や県内13地区の遭対協の支援、北アの夏山常駐隊員の委嘱などを行っているが、県の財政難で負担金は年々減少。活動費や更新が必要なパトロール隊員らの無線機の費用確保などが懸案になっているという。

 一方、昨年の県内での遭難者は過去最多251人で、その8割以上の209人が県外者。県はこうした状況から、「ふるさと信州寄付金」の使い道に、「登山道や遊歩道の整備・遭難防止対策の充実」を加え、県外者からも費用を募ることにした。

 同ヒュッテに宿泊した山岳ガイド遠藤征宏さん(68)=東京都羽村市=は「県外登山者の遭難対策費も長野県民のお金で成り立っており、県外者にも説明をすれば理解は得られると思う」。一方、登山者の田村泰子さん(56)=埼玉県蕨市=は「ふるさと納税は生まれ故郷にしかできないと思っていた。遭難対策費なら寄付したい」と話した。

 ふるさと納税制度で県が設けた「ふるさと信州寄付金」は、納税者が出身地の他、応援したい自治体に寄付すると、住民税などが軽減される制度。原課長は「制度の丁寧な説明が課題としている。

写真:涸沢ヒュッテの山口社長(左)に「ふるさと信州寄付金」で山の安全確保費用集めをPRするポスターを説明する県教委の原スポーツ課長=北アルプス・涸沢

日本のふるさと信州  ポスター