2006年の白馬岳登山遭難死

ガイドに賠償命令

熊本地裁判決

信濃毎日新聞 掲載

平成24年07月25日(水)


 北アルプス・白馬岳で2006年10月、熊本県大津町の主婦=当時(53)=が遭難、死亡したのは、登山ツアーの50代の男性ガイド(福岡県大牟田市)が注意義務を怠ったためとして、遺族が損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁(原克也裁判長)は24日までに、ガイドに約6140万円の支払いを命じた。判決は20日付。

 原告側の代理人弁護士によると、登山ガイド個人に賠償責任を認めた判決は全国初とみられる。 判決理由で、原裁判長は「ガイドは10月初旬の北アルプスが天候次第で冬山になる危険を知っていたのに、天候に関する情報収集義務を怠った」と指摘。「天候に関する情報はガイドが収集すべきで、ツアー客が自ら収集すべきものではない」とした。

 判決によると、大津町の小場佐香代子さんは06年10月6〜11日の日程でガイドが主催したツアーに参加。7日に富山県の祖母谷温泉を出発し、北アルプスを歩いて白馬岳に向かう途中、強風や吹雪に遭い、低体温症で死亡した。ツアーには福岡、熊本両県の50〜60代の女性5人が参加し、うち4人が死亡した。

 判決について、日本山岳ガイド協会副会長を務める北安曇郡白馬村の降旗義道さん(64)は取材に「当時、気圧配置が冬型になり天候が悪化することは容易に想像できた。ガイドの認識が甘く責任は大きい」と指摘。「厳しい判決だが、ガイドにはそれだけの責任が伴うことを示した」と受け止めた。