遭対協の「対策費」減少

県新たな財源確保策

後絶たぬ山岳遭難考慮

信濃毎日新聞 掲載

平成24年06月16日(土)


 登山者に安全を呼び掛けるなどの活動をする県山岳遭難防止対策協会(遭対協)に対し県からの遭難防止の「対策費」が近年減少し、県内の山岳関係者が安全確保を懸念している。中高年を中心として山岳遭難は後を絶たず、県は遭難対策費用を想定し、15日、ふるさと納税制度を使った新たな財源確保策を示した。

 県教育委員会スポーツ課によると、2012年度の防止対策費は2200万円余で11年度比約240万円減。11年度も10年度より350万円余少なかった。費用は、県内13地区の遭対協が登山シーズン中に登山口に設ける相談所の相談員の人件費などに充てられる。相談員は登山者に計画書提出を呼び掛け、天候などについて助言している。

 県内の遭難発生の多くを占める北アルプス南部と北部の2地区の遭対協は、年間延べ約800人の相談員が活動。北ア南部地区遭対協事務局は11年度は事務費を抑えて対応したが「今季は相談所開設を数日減らす」とする。これに対し県教委スポーツ課は「県全体の予算が縮減される中、遭対協費用の削減も避けられない」と理解を求める。

 5月に白馬岳付近で北九州市の6人パ」ティーの遭難死事故があった北ア北部地区遭対協はここ1、2年、ザイルなど装備購入を抑制。同地区遭対協の降旗義道救助隊長(64)は「最近、.大きな遭難事故が通年で発生しているので、こういう時こそ防止活動は大事」。北ア南部地区遭対協の山口孝救助隊長(64)は「登山者による県内経済への効果は大きい。県は山の安全にもっと積極的に取り混んでほしい」と訴える。

 こうした中で県は15日、ふるさと納税制度「ふるさと信州寄付金」の使途に、登山者の安全対策などを追加する−と発表。県教委は今後、都内の山岳団体などに寄付金制度をPRする方針だ。

 同寄付金の11年度の実績は700万円余。遭対協への県支出の削減分を補えるとは言い切れないが、阿部知事は15日の定例会見で「山の問題にはこれまで以上に取り組んでいきたい」と述べた。

写真:登山相談所で登山カードをチェックする遭対協の隊員=5月、小谷村