信州を全国のモデルに

登山ガイド

信濃毎日新聞 掲載

平成24年04月16日(月)


  長野県内の山岳ガイドの新しい仕組み「信州登山案内人」が本年度から始まる。

 山の自然や歴史に詳しく、技術は確かでサービス精神も旺盛。頼りになるー。そんなガイドの育成を目指す。全国のモデルとなる取り組みを重ねて、信州山岳の魅力アップにつなげたい。新制度は1953(昭和28)年施行の県条例を改廃してスタートさせた。目指すところは、認定試験の内容を見ると分かる。

 筆記では山の動植物、気象、地図の読み方といった項目に加え、信州山岳の歴史や文化、地域情報一般についても出題する。中高年登山者の知的好奇心にこたえられるガイドを育てるためだ。

 作文の試験も課す。「受験の動機は何か。どんな心構えでガイド活動をしたいか」といったテーマをあらかじめ示し、提出してもらう。ガイドの仕事についてあらためて自分に問い直す機会にすることと、書かれた文章から資質を判断する狙いがある。

 実技では遭難者を背負って降ろしたり、ロープを使って岩場を下りる試験などを課す。

 登山者の高齢化が進んでいる。技術や体力に不安を感じつつも、ガイドの力を借りて高山を目指す人は減ることはないだろう。新制度が定着すれば信州の山のセールスポイントになるはずだ。

 新制度の特徴の一つは、専門とする山域を決めて登録証に書き込むことだ。県内の山を▽北アルプス▽中央・南アルブス▽八ヶ岳▽御岳▽浅間・秩父▽北信五岳・志賀高原・関田山脈、の六つの領域に分け、筆記試験で精通度≠推し量る。受験者は複数の山域を選ぶこともできる。

 山にはそれぞれ地域性がある。歴史も違う。詳しいガイドの案内があれば楽しみは増す。

 長野県の山を登るときは、それぞれの山域をよく知る「信州登山案内人」を頼む、という流れの定着を目指したい。

 日本の山岳ガイドはフランスのような国家資格ではない。自治体や民間団体がそれぞれ独自の認定制度を運用している。信頼できて分かりやすい制度の必要性を指摘する声は前からある。

 長野県は山岳の利用と保全では他県をリードする立場にある。新しい仕組みが定着すれば、全国のモデルケースになるだろう。

 認定試験の受け付けは4月下旬から始める。筆記と実技の試験を6月に行い、7月に合格者を発表する段取りになっている。どんな案内人が生まれるか、楽しみだ。