黒部峡谷登山道復旧めど立たず

地震相次いだ北ア県境付近崩落や落石

信濃毎日新聞 掲載

平成23年10月15日(土)


  今月に入って相次いだ北アルプス後立山連峰付近を震源とする地震の影響で、大町市が入山口となる黒部峡谷沿いの登山道が通行不能になっている。大量の残雪のためこの時期だけ通れ、断崖にへばりつくように付けた道を歩くのが人気の下ノ廊下(旧日電歩道)では大規模な斜面崩落や落石による事故も。黒部ダム上流でもあちこちで崩落や落石があり、復旧の見通しは立っていない。

 登山道を整備している関西電力によると、下ノ廊下は仙人ダム〜黒部ダム間約17`の複数箇所で斜面崩落があり、黒部ダムなどの登山道入り口で通行禁止を告知している。

 仙人ダム近くの阿曽原温泉小屋を経営する佐々木泉さん(51)によると、5〜7日にかけて続いた地震後、ルート上には至る所に落石があったという。7日には新潟市の女性2人が落石を受けて死傷。高さ数十bの斜面が登山道もろとも崩れ落ちるのを目撃した登山客もいたといい、「こんなことは初めて」。客が見込めないため、今季は、19日で小屋を閉めるという。

 黒部ダムから湖沿いに上流に続く登山道(タンボ沢〜東沢谷出合約15`)でも土砂や岩が崩れやすい状態で、5日から看板を出して注意喚起している。補修工事を請け負う大町市の建設会社社員が6日に巡視したところ、「あらゆる斜面から石が落ちている。登山道に亀裂が入った場所もあり危険」としている。

写真:落石で寸断された黒部ダム上流の登山道