北ア登山道に↑○×

誰が? 岩の上に白ペンキで

一見して道案内…安全上問題−指摘

信濃毎日新聞 掲載

平成23年10月08日(土)


 北アルプスの槍ヶ岳(3180b)周辺から北穂高岳(3106b)に向かう稜線上でことしの登山シーズンに、何者かが白いペンキで勝手に道案内に見える印を付けたことが7日、分かった。山小屋経営者らによると、既に印がある上に塗ったものもあり、完全ないたずらとはみてはいないが、危険な道に誘導する印もあって安全上の問題を指摘。環境省松本自然環境事務所(松本市)は週明けにも現状を確認する予定だ。

 印が見つかったのは、槍ヶ岳から穂高方面に向かう稜線上にある中岳と大キレット、また槍ヶ岳山頂下の槍沢の登山道。矢印、丸印、バツ印が周辺のあちらこちらの岩に付いている。稜線上にある槍ヶ岳山荘と南岳小屋を経営する穂苅康治さん(62)=松本市=が9月中旬に発見した。

 登山道では道案内のため、山小屋関係者らがペンキで印を付けることがあり、丸は正しい道を、バツは誤った道であることを表す。ところが中岳では、岩の崩落が激しくなったため15年ほど前に通行止めにした廃道に丸印が付いていた。南岳小屋の従業員日野満さん(41)によると、廃道は「崩れやすい岩場でとても危険。一見すると行きやすく見えるため、今シーズン間違って通ってしまう登山客が多かった」という。

 槍ヶ岳周辺の道案内の印は山小屋が毎年調査し、数年に一度は消えかかったものを塗り直している。新しい印を付けることはほとんどないという。しかし、ことし勝手な印が増えたことで稜線上の印はこれまでの2〜3倍程度になったといい、日野さんは「ペンキは岩に染み込み、ずっと消えない。印を付けた人に悪意はないと思うが、勝手に付けるのは景観上、安全上問題がある」とする。

 槍ヶ岳〜穂高方面と槍沢周辺は中部山岳国立公園の特別保護地区。環境省松本自然環境事務所によると、自然公園法は無断で土地の形状を変更することを禁止しているが、道案内のペンキは該当せず、法の規制は難しいという。

 槍ヶ岳では、岩登りのルートとして有名な北鎌尾根で2002年に道案内の多数のペンキの印が付けられているのが見つかった。

写真:登山道に不必要に付けられたペンキの印(穂苅康治さん提供)=9月26日、大キレット