北アで落石2人死亡

奥穂高岳−涸沢 祖父・8歳孫滑落

信濃毎日新聞 掲載

平成23年08月08日(月)


 7日午前7時20分ごろ、北アルプス奥穂高岳(3190b)と涸沢を結ぶ登山道「ザイテングラード」で、涸沢方面に向かっていた愛媛県四国中央市、会社員大西家康さん(62)と孫の小学2年生、白川明人君(8)が落石に遭い、40〜50b滑落した。2人は県警ヘリコプターで松本市の病院に運ばれたが、大西さんは頭の骨を折っており、病院で死亡が確認された。白川君は頭を強く打つなどして意識不明だったが、同日午後8時43分に死亡した。

 松本署によると、2人は大西さんの妻(62)と3人パーティーで5日に上高地から入山。6日に奥穂高岳に登頂し、7日中に下山する予定だった。大西さんは搬送時、既に心肺停止しており、ほぼ即死だったという。大西さんの妻にけがはなかった。

 落石があったのは標高2600b付近とみられ、石の大きさなどは分かっていない。

 涸沢の山小屋「涸沢ヒュッテ」によると、遭難を目撃した登山者らは、落石を受けてバランスを崩した白川君を大西さんが助けようとし、2人とも滑落したと話しているという。

ザイテングラード
例年より浮き石多く

 ザイテングラードは涸沢と奥穂高岳を行き来するもっとも一般的な登山道で、夏山シーズンには、初心者を含む多くの登山者が通る。涸沢ヒュッテ社長の山口孝さんによると、ことしのザイテングラード付近には、落石につながる不安定な浮き石が例年より多く見られるという。

 山口さんは「浮き石を不用意に踏んだり蹴ったりすることで落石が起こる」と指摘。「登山に慣れていない人は特に注意して登ってもらいたい」と注意を呼び掛けている。

不明届け出2件北ア遭難相次ぐ

 北アルプスでは7日、軽傷の遭難事故も相次いだ。県警には、行方不明者の届け出も2件あり、山岳救助隊は捜索を進めている。

 県警によると、同日午前7時半ごろ、涸沢から下山中の都内の会社員男性(52)が岩場で転倒。左足を負傷した。白馬鑓ケ岳では同日午前7時45分ごろ、8人パーティーのうち都内の男性(64)が転倒し右足にけがをした。

 同日午前10時ごろ、大阪府和泉市の女性(69)が蝶ケ岳を登山中に行方不明になったと、同行者が安曇野署に届け出た。県警山岳救助隊が8日朝から捜索する。

 大町署によると、白馬大池では5日午後10時ごろ、2泊3日の予定で4日に入山した12人パーティーのうち長野市の会社員男性(50)が、仲間のテントで酒を飲んで宿泊先の山小屋に戻ると言ったまま行方不明になった。6、7日と夏山常駐隊員や県警ヘリなどが探したが見つからず、8日も捜索を続ける。