ナベクラザゼンソウも「発熱植物」

県環境保全研究所

国内2例目を確認

信濃毎日新聞 掲載

平成23年06月06日(月)


 飯山市の鍋倉山(1288b)に自生する県の絶滅危惧種「ナべクラザゼンソウ」が、自ら熱を出して寒冷な環境下でも花を一定の温度に保つ「発熱植物」であることが3日、県環境保全研究所の調査で分かった。発熱植物はソテツ、ハスなど熱帯、亜熱帯の植物が知られているが、寒冷な環境下としては同属のザゼンソウに次いで国内2例目の確認という。

ナベクラザゼンソウはサトイモ科ザゼンソウ属。2002年、ザゼンソウ、ヒメザゼンソウに継ぐ新種と発表された。ザセンソウは赤茶色の仏炎包に覆われた球状の花の部分が呼吸で発熱。外気が氷点下でも20度前後に保ち、春先に雪を解かして顔を出す。低温からの保護や受粉のため昆虫を誘う効果があるとされる。

 調査は、02年に新種を確認、公表した同研究所飯綱庁舎(長野市)の大塚孝一・自然環境部長が実施。ナべクラザゼンソウも発熱しているかを確認するため、昨年6月、鍋倉山で複数のナべクラザゼンソウの花の表面温度を測定。平均15・6度の外気温に対し平均21・6度を記録した。一方、ヒメザゼンソウは発熱しておらず、大塚部長は「同じ属でも発熱の有無がある。進化の解明に役立てるのではないか」と期待。植物の発熱の仕租みに詳しい岩手大の伊藤菊一教授(植物生理学)は「日本に3種あるザゼンソウの多様性を裏付ける調査結果」と評価している。

写真:鍋倉山に自生するナべクラザゼンソウ=県環境保全研究所提供
表面温度を示すカメラ画像。赤い部分が発熱しでいる花の部分=県環境保全研究所提供