白馬岳雪崩死者2人に

千曲の男性遺体発見

 

信濃毎日新聞 掲載

平成23年01月03日(金)


 北安曇郡白馬村の北アルプス白馬岳(2932b)の白馬大雪渓で「龍鳳登高会」(東京都)の男女9人パーティーが雪崩に巻き込まれ男性3人が死傷した事故で、現場を捜索していた大町署員らは30日午前8時15分、このパーティーとは別の千曲市若宮、自営業佐藤秀光さん(69)の遺体を発見した。この雪崩での死者は2人になった。

 同署によると、佐藤さんは単独行。29日に死亡した横浜市の無職横川英治さん(63)が埋もれていた場所より上部で、深さ約50aの雪中から発見された。

 付近では神奈川県の40代男性の物とみられるリュックサック1個が29日に見つかっており、同署は他にも遭難者がいるとみている。ただ、この日は雷雨で、捜索中も杓子岳方向から雪崩が2回発生。最大で長さ200b、幅70bほどだったという。午後2時すぎに捜索を中止し、下山した。1日の捜索は天候などを見て判断するという。

 一方、9人パーティーの関係者によると、29日午後、白馬岳の主稜線を目指していてガスに包まれ、下山を決めた標高2500b付近には、スキーヤーら30人ほどがいたという。が、周辺の山小屋や同署には今のところ、行方不明者の情報は入っていないという。

積雪続く大雪渓「まだ春山でない」

 「まだ春山ではない。山では冬は終わってない」。北安曇郡白馬村の北アルプス白馬大雪渓で雪崩に巻き込まれた2人が遺体で見つかった事故。地元の山岳関係者はこう指摘する。例年なら大型連休ごろには雪崩の危険は減り、雪渓を選んで登る登山者が増えるが、ことしの白馬岳周辺はここ1週間に何度か積雪に見舞われており、雪崩が起きやすい状態が続いているからだ。

 白馬岳(2932b)を目指す最も有名なルートは、猿倉登山口から谷伝いに登る大雪渓ルートだが、それは夏季の場合。冬季は、大雪渓北側の白馬岳主稜や南側の杓子尾根など尾根伝いのルートを取り、雪崩が多発する大雪渓は避けるのが普通という。

 「気候が落ち着くまでは大雪渓は雪崩の巣だ。なぜ夏のさなかにあれだけ大量の雪が残っているのかを考えてほしい」と、白馬山案内人組合の松沢幸靖企画部長(44)は話す。

 白馬連峰の開山祭「白馬岳貞逸祭」が毎年5月下旬になっているのも「この時期から大雪渓も落ち着く、という意味がある」。北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会の降旗義道救助隊長(63)はこう指摘している。

写真:県警航空隊が30日朝、上空から撮影した白馬大雪渓。写真中央の白い部分やその下部などが雪崩の跡