白馬大雪渓で雪崩1人死亡

9人巻き込まれる

信濃毎日新聞 掲載

平成23年04月30日(土)


 29日午後4時ごろ、北安曇郡白馬村の北アルプス白馬岳(2932b)の白馬大雪渓で雪崩があり、下山中の9人パーティーが巻き込まれた。大町署などによると、このうち男性3人が県警ヘリで救助され、大町市、同郡池田町の病院に搬送されたが、横浜市の無職横川英治さん(63)の死亡が確認された。死因は窒息死。

下山中2人けが

 残る2人のうち福島県喜多方市の無職柴田信雄さん(60)は右肘を骨折、東京都青梅市の自営業井上清治さん(63)は頭を切るけが。メンバーによると、山岳会名は東京都の「龍鳳登高会」という。

 同署の調べによると、雪崩が起きたのは、標高2千b付近の大雪渓と2号雪渓の合流点辺り。大規模な雪崩とみられる。発生当時はガスが出ていて視界が悪かった。

 メンバーらによると、現場近くの雪渓上に簡易テントがあり、スキーヤーもいた。メンバーの所有ではないリュックサック1個も見つかっており、同署はほかにも巻き込まれた人がいるとみて、30日朝から署員7人で捜索する。

地吹雪引き返した後

 「真っ暗。ここにいるよーと叫び、口の周りに空間をつくるために、もがいた」。雪崩に巻き込まれた9人パーティーの女性(64)は下山後、上ずった声で話した。うっぶせの状態でザックや足の一部以外が埋まったが、仲間に掘り起こされ、無事だつた。

 一行は29日年前7時ごろ、白馬村の猿倉から入山。午後、地吹雪で周りが見えない「ホワイトアウト」状態になり、ルートを外して時間をロスした。標高2500b付近にいた午後3時前ごろ、引き返すことにした。

 「雪崩だ」。リーダーの宗像秀明さん(62)を先頭に数十bの列になって1時間ほど下った時、メンバーの声が響いた。気が付くと、周りに人の背丈はどの雪のブロックが転がっていた。

 後方にいた横川英治さんが埋まっているのを見つけ、皆で掘り出した。20分ほど心臓マッサージを繰り返したが、反応はなかった。

 現場付近には一行のほかにスキーヤーが1人いたという。宗像さんは「ほかにも巻き込まれた人がいるのではないか」と不安げに話した。

 白馬岳周辺はここ1週間で何度か積雪に見舞われた。北アルブス北部地区山岳遭難防対策協会と大町署はこの日、白馬村、小谷村、大町市の登山口7カ所に登山相談所を開設し、雪崩など春山登山の注意点を呼び掛けていた。

 同遭対協の降旗義道救助隊長(63)は「ここ数日も新雪が積もっており、雪崩の危険は例年以上だ。春が遅れているという認識を持って、斜面や沢筋は避けるべきだ」と話した。