涸沢で雪崩1人けが

北ア山小屋施設も被害

信濃毎日新聞 掲載

平成23年04月28日(木)


 松本市安曇の北アルプス・涸沢(約2300b)で26日午後4時半ごろ、雪崩が発生した。現地の山小屋涸沢ヒュッテの関係者によると、雪崩の規模は長さ約1キロ、幅約50bで、屋外で除雪作業をしていた同ヒュッテ支配人小林剛さん(47)が巻き込まれた。小林さんは仲間に救出され、27日朝に民間ヘリコプターで下山し、松本市の信大病院に搬送されたが、左足すねの骨を折るけが。

 同ヒュッテ社長の山口孝さん(63)によると、ヒュッテ本館の屋外の売店施設が被害を受けた。涸沢はここ1週間ほど降雪が多く、26日夕方までの3日間で約1bの積雪があった。凍った斜面上に積もった雪が落ちる「表層雪崩」とみられ、涸沢岳方面から流れてきたという。同ヒュッテは今季営業開始の27日に向け、小屋開けの準備を進めていた。

 雪崩発生を受け、北ア南部地区山岳遭難防止対策協会は、引き続き雪崩の危険があるとして、26日夕方から横尾より上部に入山しないように呼び掛けている。

 県警地域課は大型連休(29日〜5月8日)を前にした県内の春山情報で、北アでは気温が低く、沢筋や尾根の雪が多いと発表。涸沢についても「連休初めにかけ、表層雪崩の発生に注意が必要」としている。

直後に突風体飛ぶ ・雪かき作業中の従業員

北アルプス・涸沢で発生した26日の雪崩。「(けがをした小林剛さんは)雪崩に伴う突風で7、8b飛ばされ、体が雪に埋まった状態で見つかった」。涸沢ヒュッテ従業員の山口浩一さん(33)は27日、雪崩発生直後の様子を語った。

 山口さんは同日の営業開始に向けて、新館でほかの従業員と準備作業をしていた。

 26日午後4時半ごろ、建物の梁が上下に大きく揺れて、棚からものが落ちてきた。揺れは10秒ぐらい続き、収まった直後に外の様子を見ようと、小屋を飛び出した。屋外で1人で雪かきをしていた涸沢ヒュッテ支配人の小林さんが、手足だけを雪の中から出してもがいており、仲間とともに掘り出した。

 午後6時ごろ、吹雪は小雪交じりの雨に変わり、小規模な雪崩が午後9時すぎごろまでに数回発生。26日は吹雪のため歩いて下山できず、27日午前6時ごろ、山口さんが同行して民間ヘリで搬送した。

 山口さんらが同日朝、一帯の様子を確認したところ、雪崩は涸沢岳方面で発生し、テント場を通ったとみられる。山口さんは「この時期にテント場まで雪崩がくるのも珍しい」と話している。

写真:雪崩で裏れた涸沢ヒュッテの売店付近=27日午前5時25分