登山ガイド料の一部を登山道整備にあてる活動

穂高連峰の自然将来に

谷 剛士さん(29)

信濃毎日新聞 掲載

平成22年09月23日(木)


 「穂高に住んでこそ、より詳しく安全な情報が提供できる。山小屋の人はローカルな山のスペシャリスト」

 支配人を務める北アルプス・洞沢小屋の従業員ら県内の4人と7月、山岳ガイド組織 「穂高ガイズ」を結成した。ガイド料には遭難救助や登山道整備の費用として15%上乗せしている。山小屋が担う登山道整備への国などの補助金は不十分だ。「穂高の自然を将来に残したいし、登山者にも考えてはしかった」。登山者も納得してくれ、これまで10回余ガイドをした。

 大阪府羽曳野市出身。高校時代はバスケットボール部で登山経験はほとんどなかった。卒業後、「一度家を出たい」と北アの唐松岳頂上山荘でアルバイトを始めた。雪が残る5月、アイゼンを履き必死で登った。

 仕事はつらくてすぐ辞めようと思ったが、一人で雪の登山道を下りるのが怖く「雪解けを待っていたら、シーズン終了まで働くことになった」。厳しい自然状況に暮らし、遭難救助にもひた向きな従業員の姿を見て、山小屋で働き続けたいと思った。

 知人の紹介で涸沢小屋に勤め始め、今年で10年目。「オフシーズンに海外の山小屋を見学してガイド技術も磨き、愛する地元の山に還元したい」。松本市梓川梓在住。