北穂高小屋環境型トイレ稼働2年

「安全面からも重要」強調

信濃毎日新聞 掲載

平成22年08月24日(火)


 北アルプス北穂高岳(3106b)山頂直下の北穂高小屋で便槽交換式の環境型トイレが今シーズン、稼働から2年を迎えた。同小屋は北アルプス最高所にあり、厳しい自然環境下での環境型トイレの導入は当初、難しいとされていた。小屋の主人、小山義秀さん(42)=松本市=は「難工事だったが、快適なトイレを登山者に使ってもらうのは山小屋の当然のサービス」と話している。

 同小屋は以前、し尿をほぼ未処理で垂れ流していた。小山さんは「このままではいけない」と、約5年前から環境型トイレの導入を検討。険しい岩稜帯にあり、狭い地形の中で設置して効率よく管理するには便槽交換式が適していると考えた。2008年8月、環境省の補助制度を活用して約3500万円かけて完成させた。既存の石垣などを削り、容量約700gの便槽2個を設置する場所を確保するのに苦労したという。

 4月下旬から11月初めまでの営業期間中に槍ヶ岳(3180b)から縦走してくる登山者ら約1万人が小屋のトイレを利用する。

 便槽を交換するヘリコブターの輸送代など維持費がかかり、トイレ前に設置してあるチップ箱の収入だけでは「やっていけない」(小山さん)という。それでも、岩稜帯が続く穂高連峰では「縦走の途中で用を足そうとして滑落してしまう事例もある」と言い、小山さんは「安全面からも山小屋のトイレは重要」と意義を強調していた。

写真:北穂小屋のトイレの便槽。設置場所は切れ落ちたがけとなっている。