岳沢ヒュッテ経営上条さん葬儀に1000人

信濃毎日新聞 掲載

平成18年4月21日(金)


 車にひかれて急死した北アルプス・岳沢ヒュッテ経営の松本市安曇、上条岳人さん(69)の葬儀が二十日、同市内で行われた。北アの山小屋や上条さんが救助隊長を務めた北ア南部地区山岳遭難防止対策協会の関係者り千人近くが参列。「人生のすべてを山にささげた」(長女の明穂さん)上条さんに、最後の別れを告げた。

 葬儀委員長で涸沢(からさわ)ヒュッテ会長の小林銀一さん(75)=松本市高宮北=は「五十年にわたり岳沢ヒュッテを守り、登山者の世話と遭難者の救助に当たった。岳人さんの死は断腸の極み」と声を詰まらせた。

 同協会補導部長の塚田三郎さん(81)=安曇野市穂高有明=は弔辞で、上条さんが一九五五(昭和三十)年以来二百回を超す遭難者救助に当たったことに触れ、「的確な判断で救助隊員を導いた。上条さんの崖高な精神を引き継ぐ」と述べた。葬儀前に、上条さんに渡辺巧県警本部長の感謝状が贈られ、会場にピッケルやザックなどの遺品も並べられた。

 上条さんは十七日、松本市の上高地ヘリポートで、荷物を運んできた保冷車にひかれて死亡した。岳沢ヒュッテは今冬の残雪に埋もれ、小屋開けを五月の大型連休明けに延期している。明穂さんは「今季開業できるかどうかまだ分からないが、父が守ってきたヒュッテが無事であるよう祈っている」と話していた。

写真:山小屋関係者ら多くの参列者が見守る中、しめやかに行われた上条岳人さんの葬儀