登山道の整備・補修 県、登山者から協力金

信濃毎日新聞 平成17年3月3日(木) 掲載 

 登山道の整備や補修の費用を誰が負担するか明確になっていない問題で、県は来年度、山小屋が登山者から集める任意の協力金と、県費補助によって半額ずつ賄う方式を試行する。任意とはいえ登山者に負担を求めるのは初めて。「登山者に当事者意識を持ってもらえるよう問題提起したい」(県環境自然保護課)との狙いだが、どこまで協力を得られるか―。

 夏山シーズンに北アルプス北、南部の各1カ所で、山小屋が主体となる登山道の補修で試行する予定。2月県会に提出した来年度当初予算案に県費補助100万円を計上している。山小屋側は9日、北ア山小屋協会(約70人)の総会で県から説明を受け、今後、協力金をどう集め、どの登山道補修に充てるか―などを詰めていく。

 市町村による事業費2000万円以上の登山道整備で国、県が3分の1ずつを負担する補助制度があったが、国・地方財政の「三位一体改革」で来年度から廃止になる。利用者が多い登山道では崩落や雨による浸食も進んでおり、登山者に負担を求める今回の試みは、少しでも財源を確保し、小規模な維持補修を進めやすくする狙いもある。

 これに対し、北ア山小屋協会長の松沢貞一・北ア北部山小屋組合長は前向きな姿勢を示す一方で「現状では集まりにくい」と話す。山小屋のし尿処理に協力金を求めるチップ制は浸透し、松沢さんの白馬尻小屋では年間30万円ほどを集めるが、登山道については「(し尿処理に比べ)維持管理に対する登山者一人ひとりの責任を実感してもらいにくいのではないか」とみる。

 県は、登山者の反応を見ながら、国、県、市町村や山小屋経営者らによる「信州山岳環境保全のあり方研究会」(事務局・県環境自然保護課)に諮り、登山道の整備、補修の主体と費用負担のあり方について、さらに議論を深める考えだ。